そこは、複数の魔物が潜む洞窟。さまざまな種の魔物が獲物と住処を求めてせめぎ合う、最も魔物の活動が激しい場所である。ここに存在するというある薬草を求め、容姿がほぼ瓜二つな二組の戦士達が来た。





呪い攻撃を放つレッサーデーモンを絶命させ、アレフはすぐさま化けキノコ類を薙ぎ払い、素早く駆け抜ける赤い疾風を追って先を進む。赤い疾風はウドラーの群れを一閃で殲滅させ、襲いかかってきたアンクルホーンを一刀両断する。
相変わらず狙いが的確だ、そう思いながらアレフもシャドーサタンを「気」を纏った一閃で葬り去る。再び現れたアンクルホーンの一撃を盾で防ぐと、疾風がアンクルホーンを薙ぎ払う。己より輝く長い金髪が燃え盛る炎のように揺らめいた。
「手出しは無用だったか?」
周囲に目を走らせながら、サルムが問いかける。近寄る魔物を次々と薙ぎながら、アレフは答える。
「いや、むしろ助かった。あの一撃は予想以上だった」
「そうか」
僅かに微笑み、サルムは再び敵の群れに飛び込んだ。その瞬間、雷の光が走り、多くの敵が吹き飛ばされた。
妥協を許さぬアレフの着実な剣に対し、サルムの剣は柔軟性を併せ持った疾風の剣である。時には敵の懐に一撃を放ち、時には敵を一気に殲滅させる。また、同時に魔法を扱う所をうかがうと、剣を極めるしか考えぬ自分よりも閃きに満ちている。
サルムの唱えた灼熱の呪文が辺りを包み、多くの魔物を焼き尽くす。それに耐えた魔物をアレフが迅速に次々に仕留める。戦術が違うとはいえ、2人の剣に迷いはない。自らの技術を磨くという信念は、2人の精神に強く根付き、神技と称される剣技を生み出す。
勇ましき雄たけびを上げながら駆け抜ける疾風の後を、無駄なく敵を絶命させながらアレフは追った。





「……足りねえなあ」
「同感だな」
巨体のトロルキングを粉砕した体格のいい青の戦士が呟き、不死鳥の剣を構えた彼に瓜二つの青の戦士が同意した。2人の言葉を受け、多くの魔物が恐れをなして後ずさりをする。
先程まで次々と襲いかかる敵を薙ぎ払ったとは思えないほど呼吸を乱していないアレンに、ライムはニッと笑みを浮かべる。頭脳戦は苦手だという弱点を見事にパワーで補っている男はまさに戦の神の申し子。だがしかし、同時に戦術を織り込めば更に強くなれたものだと、時折道具や武具の効果を使って敵の勢いを弱め、彼の盾となる男は思った。
有り余る力を発揮するままに敵を薙ぎ払う戦術はほぼ似ているものの、アレンとライムとではやや趣向が違った。アレンは遠慮なく敵を粉砕していき、最終的には敵をおそれおののかせる神々しい鬼神。一方のライムは、一見ごり押しで敵を片っ端から薙ぎ払うが、それは敵の勢いを弱らせ、仲間が止めを刺すチャンスを作り、自らがとどめを刺す瞬間を生み出す機転の利く戦神。
戦術を生み出せるという考えの違いが出る瞬間だが、次々と襲いかかる魔物と対峙する事が2人の闘争心に火を付けるのは同じだ。
正面から迫ってくる鬼棍棒ににやりと笑みを浮かべたアレンの背後に迫る影。その影に気付いたライムは、不死鳥の剣から雷鳴の剣に持ち替え、剣から激しい雷を地面から現れたウイッチネイルに浴びせる。アレンが背後の気配に気づいた時には、ウイッチネイルはライムの一閃で崩れ去った。
「目の前の敵もいいが、背後にも気をつけろよ。目的の品に着く前に大ケガでもしたら厄介だからな」
ニヤッと爽やかに笑う機転の利く男に笑いかけ、アレンは鬼棍棒に牙を剥く。
2柱の戦いの神をそれぞれに秘めた青の戦士は、獰猛な敵に飛びかかった。





「数多いのによく疲れないなあ。そういうスタミナ面は尊敬するよ」
雷を纏った一閃で敵を薙ぎ払った茶髪の青年に、黒髪の優男は苦笑交じりに声をかけた。茶髪の青年はにこやかに笑いつつ、戦闘態勢を整えながら答えた。
「体力には自信あるよ、僕」
素早い太刀筋で敵を薙ぎ払うアレクの隣で、サタルとよく似た少女が剣を振るう。機械的でありながら確実に敵をしとめるサンドラが口を開いた。
「サタル、文句言ってないで手を動かしなさい」
「おお、厳しいなあ」
今日は調子のいいサンドラだが、いつまたスタミナ切れを起こすかわからない。彼女の様子に気を配りつつ、サタルは剣を操る。アレクも時折サンドラを窺いながら的確に敵を仕留める。体力面がサタル達の弱点だと聞いた勇者は、2人に負担がかからないように敵を殲滅しようと、魔力を剣に宿らせる。
「2人とも、さがってて」
「…まさか、ギガブレイクを使うんじゃないだろうね?アレは君にも負担が大きいだろう?」
「違うよ。アレはいざって時にしか使わないから」
優しげに微笑み、アレクは駆けだす。王者の一閃とも称えられる一撃が、大魔神やネクロバルサを切り裂いた。研ぎ澄まされた集中力と自分よりも優れた体力は目を見張るが、彼の長所であり弱点でもある他人への優しさが自分のスタミナを削らせることを、彼は考慮しているのだろうか。隣の少女もスタミナが切れかかってるし、そろそろ殲滅させた方がいい。そう判断したサタルは、魔法を発動させるために集中力を高める。
「サタル!サンドラ!」
その時、背後から敵の気配を感じ、アレクの焦ったような声が上がる。サタルが魔力を暴走させようとした瞬間、アレクとは違う魔法剣が飛びかかってきたシルバーデビルを切り裂いた。眩い閃光が、その魔法剣に宿る魔力の強さを表している。その魔力に敵の群れが呆然している隙に、サタルは最上級呪文の威力に倍増したイオラを放つ。巨大な爆発が敵を包んだ。
周囲から敵の気配が一瞬で消えるのを感じ、サタルは目をあける。優しげな翡翠の瞳をした少女が、心配そうに見ている。
「大丈夫ですか?また魔力の分配を間違えていたみたいで…」
魔力がサタルの次にずば抜けており、そのため魔法剣の魔力を加減できないマリアが申し訳なさそうに言うのを、サンドラがポーカーフェイスではあるが優しげに宥める。
「大丈夫よ、マリア。むしろ助かったわ。それに、魔力が強いのがあなたの魔法剣の特徴だから自信を持ちなさい」
可愛らしい少女勇者が微笑むと、別次元ではあるが彼女の兄であるアレクも微笑み、改めて先を見つめた。奥できらりと光るものがある。
「目的の品はもうすぐだよ。ここからは僕とマリアが戦うから、サタル達は休んで」
「いいよ、そう言う気遣いは。キミも随分体力を削られてるんだろ?」
サタルが指摘すれば、アレクはばつが悪そうに苦笑する。
敵の気配がない事を確認した後、4人の伝説の勇者は歩き出した。





「おーっ!アレクご先祖!サルムご先祖!」
「お疲れ様です」
洞窟の外へリレミトを使って脱出すれば、一足先に出ていたライムとアレンが出迎える。ところどころ服が焼け焦げているが、この強靭な肉体と体力を持つ末裔2人は一向に疲れた気配を感じさせないどころかやけに生き生きとしているのは気のせいだろうか。
「サタルさんもサンドラさんもご無事で何よりです」
「オレたちも目的の品は取りました」
兜をはずして汗を拭うアレフに、手櫛で髪の毛を整えるサルム。どちらも依頼を達成した充実感に満足しているらしい。
「みんなお疲れ様。これで依頼は完了だね」
「はあ…これでやっと休めるねえ」
「帰ったら皆さんでお茶会でもしましょうか」
「その前にシャワーを浴びたいわ」
優しげに、ひょうひょうと、おっとりと、少しだけ、それぞれの人柄を表すように笑ったロトの勇者たちも久し振りの外の空気を感じた。

 

 
 
 

(感想)

いつもお世話になっております夏ミカン様からいただきました。互いにロト組、天空、その他の人々の交流を書こうと某所で約束しましたところ、その翌日に夏ミカン様は完成のお知らせを私に下さいました。恐ろしく速いです。

 

三話くださったのですが、まずこの「バトルスタイル1」から、拝読して抱いた感想というかなんというかをリアルタイムn感じで粗雑な箇条書きにて書かせてもらいます。

 

・夏ミカン様宅主人公と拙宅主人公達の戦闘傾向についてよくまとめていらっしゃる。

・サルムさん大活躍速い。さすが剣神。

・ほぼ剣術オンリー、それがアレクですよくお分かりでいらっしゃる。

・アレンのごり押し通常運転です。ありがとうございます。

・ライムさんご迷惑おかけしますー。うちのアレンがすみません。

・二人の戦の申し子……なるほど……。

・持続性のない拙宅WⅢ主で申し訳ない。

・アレクささんそのままま引っ張ってあげてくださいお願いします。

・おっとり勇者マリアさん可愛い。

・サタル剣振るえ(笑)

・お茶飲みとか楽しそうですね!

 

箇条書きにしてみたら大体がお詫びでした(笑)しかもあんまり長くない。

夏ミカン様宅主人公さん方と交流させてもらっていると、Ⅰ主Ⅱ主のように似てはいるんですけど決定的なところが違ったり、一方でWⅢ主のように全然違ったりというところがつくづく面白いと感じさせられます。それは他の天空やその他に関してもそうなのですが。

夏ミカン様と私、それぞれの嗜好が全く違うせいでもあるかもしれません。

 

あとはロト組全体に関してもそうです。拙宅は一応先祖子孫関係を自覚しているものの、仲のいい先輩後輩のような感じです。一方夏ミカン様宅は家族やら兄弟姉妹みたいです。あたたかくてほっこりな。

 

そういう考える人によって全然違うロト組って素敵だなーっ(小並感)

 

では夏ミカン様、この度はありがとうございました。

 

 

 

20140906