「よう!ひさしぶりだな、アレン!」

どこか聞き覚えのある声に呼ばれ、下校中のバリバリの14歳中学2年のアレン・ローレシアは振りかえる。見れば、銀髪の凛々しい高校生が笑顔で近寄ってくる。
アレンの知る姿より背も伸び、体格も声も男らしくなったが、太陽のような笑顔は変わらない。アレンは笑顔で近寄った。

「ライム先輩!お久しぶりです!」
「おう!空手頑張ってるか?強くなったんだよな?」
「はい!先輩もお元気そうで何よりです!」

気さくな笑顔で接するのは、昨年アレンの中学を卒業した空手部の先輩ライム・ジェーリー。運動神経抜群で、他の部活の助っ人をよく頼まれていたのを鮮明に覚えている。それでいて誰に対しても気さくかつ勝負には厳しい先輩で、部内でも一目おかれていた存在だった。質は悪くないが女好きという欠点もあるものの、アレンからすれば尊敬すべき先輩だ。

「お前も背が伸びたな~。これだと、オレも抜かれちまうかもな」
「いえいえ、そんなことないですよ…今帰りなのですか?」
「ああ。兄貴と一緒に妹を迎えにな。で、家にいこうとしたらお前を見かけて、懐かしくってつい呼んじまった」
「え?先輩に兄弟?」
「おう。弁護士になった兄貴と大学生の兄貴、それに小学生の妹がな」

衝撃の事実にアレンは目を白黒させる。その一方で、休日に会うライムの着る私服が少し使い込まれた雰囲気があったことを思い出す。その二人の兄のお下がりだと考えれば不思議ではない。
あのライムの兄たちともなれば、男気に溢れたたくましい男性だろう。少年アレンの胸は期待で膨らんだ。

「ライムおにーちゃーん!」
「ライム、どうしたんだ急に…その子は?」

と、ライムに飛び付いてきたのはピンクのランドセルを背負った女の子。そして、その後を追ってきたのは、アレンの考える『美形』を越える金髪の美青年だった。凛々しい面立ちにキリッとした眼差し、そしてすらりとしたスタイル。だが、不思議と軟弱な印象は受けない。
まるでモデルのようなあの人は誰だろう?ライム先輩の親戚かな?ボーッと見惚れていたアレンだが、ライムの言葉に一気に現実に戻った。

「兄貴!紹介するぜ、中学での後輩のアレンだ」
「そうか。はじめましてアレン。ライムの兄のサルムという。よろしく頼む。マリア、挨拶は?」
「はじめまして、マリアと言います!よろしくおねがいします」
「ど、どうも…」

イメージとはかけ離れた美形で礼儀正しいライムの兄。驚くと共に妙に納得してしまう。ライムも所謂『イケメン』の部類に入るため、彼の兄弟がイケメンの部類に入っててもおかしくはない。それより驚いたのが、ライムの妹マリアだ。てっきり小6かと思ったが、まだ小4の無邪気な女の子、そして年の離れた兄3人が大好きな末っ子だと、アレンでもすぐわかった。
他愛のない話を少ししてから、ライムが言った。

「なあ、アレン。今日は用事ないんだろ?」
「はい」
「じゃあうちに来ないか?せっかくだからアレク兄貴にも会わせたいし」
「え?でも…」
「比較的うちと近いだろ?サルム兄貴もいいか?」
「オレは構わないが…帰る時間は大丈夫なのか?親さんに連絡しないと…」
「あっ!サルム君!」

アレンにとって馴染んだ声が、サルムを呼んだ。その声の方向を見ると、アレンの従兄弟であり一流会社でバリバリ働いてるアレフが駆け寄ってくる。見れば、サルムは苦笑を浮かべ、先輩は「またか」と言わんばかりに顔をしかめた。

「こんなところで会うなんて奇遇だな。マリアちゃんも元気そうで何よりだ」
「こんにちはです!」
「ご無沙汰してます、アレフさん」

なぜ、従兄弟が先輩の兄を知っているのだろうか?強く疑問に思ったが、先輩が説明してくれた。

「兄貴がインターンシップ…つまり職場体験でアレフさんの会社にいって、それで知り合ってからちょくちょく会いに来るんだよ」
「ああ…なるほど…」

アレンは一ヶ月前の職場体験でお世話になった人物と従兄弟のやり取りを思い返しながら納得した。アレフは気に入った人物はとことん慕い、年下なら可愛がる。恐らく、その職場体験でサルムを気に入ってしまったのだろう。
ある意味しつこい従兄弟に気に入られるとは、サルムさんも苦労するなあ…と思いつつ、声をかける。

「アレフ兄ちゃん」
「あ、アレン。アレンもサルム君と知り合いだったのか?」
「俺の部活の先輩がサルムさんの弟なんだよ」
「…ああ、ライム君と知り合いだったのか。なるほど…それでサルム君!卒業したら是非とも……いっ!」

いたたまれなくなったのか、ライムが従兄弟の頭にチョップを入れた。しかも従兄弟が痛みで頭を抱えるほど遠慮なく。
マリアがうずくまる従兄弟に「大丈夫ですか?」と声をかけてるが、ある意味恒例となっているのだろう、サルムはライムに注意もせず苦笑を浮かべている。
ため息をついたライムは、アレンの方を向いて声をかける。

「んじゃ、オレんちにいくぞ」
「え?いいのですか?」
「どーせこいつも付いてくるから、こいつに送ってもらえばいい。知り合いなんだろ?」

問われて、恥ずかしいながらも頷く。なぜ従兄弟の件で俺が恥ずかしい思いをしなきゃいけないんだ、と従兄弟を恨めしく思ったが、マリアが無邪気に「アレンお兄ちゃんとお話しできるー!」と喜んだため、まあいっかと考え直す。久々に先輩と話したり、この可愛い少女の相手をしたりするのも悪くはない。

「はい!」
「よっし!じゃ、帰ろうぜ」
「サルムお兄ちゃん、アレフお兄ちゃん、いこー!」
「ああ。せっかくだから夕飯おごるよ。何がいい?」
「いつも悪いですね…どうしようか」
「「寿司!」」
「おすし!」

従兄弟の奢りだと聞くと、ライムとマリアと共に遠慮なくリクエストする。
先輩の家での賑やかな時間と、先輩のもう一人の兄を楽しみにしながら、アレンは道を進んだ。

 

 

 

 

(感想)

いつもお世話になっております、夏ミカン様からいただきました!

青い小鳥のさえずりで今主人公現代パロディが流行ってまして、その影響もありまして書いて頂きました。うちのⅠⅡ主と夏ミカン様のⅠⅡⅢ♀主です。

 

うちⅢ主二人と夏ミカン様宅Ⅲ主♂さんはまた次回!……と仰っていたのですが、ということは続きを頂けるということでよろしいのでしょうか? 首を長ーくしてお待ちしたいと思います。そのためにはまずうちⅢを書かなくては……。

 

では、この度は素敵なお話をありがとうございました。

今後ともよろしくお願い致します。


 

 

20150220