気まぐれな神様の作ったちょっとおかしな世界のとある日。

「……遅いなあ……」

丘の上にあるお屋敷のリビングで、読書しながらそうぼやいているのは伝説の勇者ロトことアレク。チラチラと窓の外を確認し、再びため息をつく姿は、いつもの頼りがいのある雰囲気はなく、少々元気がない。再びため息をつく彼を心配したのか、レックが話しかけた。

「アレク、どうしたんだよ?ため息ばかりついていたら幸せが逃げるって言うぞ」
「そんなこと言っても……心配なんだよ……」
「心配って……誰が?」

故郷の幼い妹か、元の世界の恋人か?そう思ったレックはそう問いかけたが、アレクは声をあげて言った。

「サルムとライムだよ!買い物に出掛けてから、帰ってこないんだよ!心配しない方がおかしいよ!」

それを聞いたレックは口元をひきつらせ、「そ、そうか…」と答えるしかなく、現実逃避のために持っていた難しい資料に再び目を向けた。そんなレックにはお構い無しで、アレクはぶつぶつと頭を抱えて呟いていた。

「魔物に襲われたのかな……それとも変な人に話しかけられてるのかな……それとも迷子……?こんなに遅くなるなるなんて聞いてないよ……」
(いや、二人とも成人してるから。方向音痴じゃないかぎり迷子とかあり得ないだろ)

資料を見ながら心中でそうツッコみ、ため息をつくレック。この心配性モードになったアレクはなかなか落ち込みから回復しない。それを理解しているからこそ、レックには心中でツッコミを入れながらアレクの愚痴に付き合うしかできなかった。
そんな状態が数十分続いた頃だった。

「ただいまー!」

扉が開く音と共に聞き馴染んだ快活な声が響き、今まで机に突っ伏していたアレクがガバッと顔をあげた。そしてリビングに金髪の青年と銀髪の青年が入ってくると、すぐに近づいた。

「おかえり!サルム、ライム!」
「おっ、アレクご先祖……ぐえっ!」
「た、ただいまです」

勢いよく抱き締められ、戸惑う二人に構わず、アレクは二人を確かめるかのように力強く抱き締め、心配げな声で言った。

「遅い!一体どうしたの!?心配してたんだよ!」
「す、すみません……実は強盗事件に巻き込まれまして……」
「強盗!?大丈夫だった!?ケガしてない!?」
「だ、大丈夫だ!つーか強盗はオレ達がぶっ飛ばして警察に突き出したから平気だって!」
「はい!ケガ人は誰もいませんし、オレ達も無傷です!ですから大丈夫ですよ!」

サルムとライムの言葉にようやく落ち着いてきたのか、アレクはやっと二人を解放し、心底安心した表情で微笑んだ。

「……ならよかった。てっきり魔物に襲われて大ケガしたのかと……」
「ご先祖、オレ達そこまでやわじゃねーから。魔物なんて簡単にぶっ飛ばせるからな」
「ええ。ですから安心してください」
「あはは……ありがとう」

ようやくいつもの笑顔になったアレクは、「頑張ったね、偉い偉い」とサルムとライムの頭を優しくなでる。それに戸惑った声が子孫二人からあがっても、しばらくはその状態が続くだろう。
そう目星を着けたレックは、二人が買ってきた品物を倉庫や冷蔵庫に片付けようと考え、読んでいた資料を机の上に置いた。






(おかめから)
夏ミカン様宅「夢見の物語集」10000Hit記念のリクエスト企画で頂いてまいりました作品です。「夏ミカン様宅ロト三人でアレクさんが先祖バカを発揮するお話」でリクエストしました。ありがとうございました。

やっぱり可愛いですね……(しみじみ)
可愛いロト組が好きです。過保護なご先祖様とかいいですよね。うちのにも分けて欲しいわ。

では夏ミカン様、この度は10000Hitおめでとうございました。またリクエストにお答えくださりありがとうございました。今後のご活躍をお祈りしております。




20140315