ニールはその日、生涯でもう二度と見られないだろう光景を目にした。群青の天蓋一面に流星が尾を掃いている。 星吹雪の夜、とでも呼べばいいのだろうか。

「美しいですね」

 声の主は自分のずっとついて来た少年だった。頭や首ごと後ろにもげてしまいそうなほど一心に、顔を天に向けている。

「あれが、僕達――いえ、天使の本来の姿。生まれた時に還ったのです」

 少年の滑らかな頬は白く濡れたように光っている。ニールは目を擦った。しかし何度視界をリセットしても、その大きな瞳から雫など零れてはいなかった。

「彼らは神のおわす天界に召されたのでしょうか?」

 ニールは答えられなかった。

「すみません、つい愚かなことを窺ってしまいました。答えなくとも結構です」

 ニールが口を開くより先にナインが言う。

「きっと皆満足したでしょう……天界に帰るのが彼らの悲願だったのですから」

 君はどうなんだ、とは自分には訊けなかった。 









20140603 初稿

20180527 加筆修正