※本誌で無限月読にかかったシカマルがテマリさん相手に「結婚なんて面倒なことry」的なことを言っていたという話を聞いてかっとなって書いたテマシカです。捏造にもほどがありますがギャグですのでそこはまあ。




「……ならば仕方ないな」

 オレの一言を聞いたテマリは、何故か溜め息を吐く。


「結婚しよう、シカマル」


 オレは固まってしまった。

「……え?」
「お前が結婚を面倒だと思っているのは分かっていた。ならばお前は何もしなくていい」

 テマリはオレの手を握る。

「お前はいい忍だ。そんなお前を継ぐ子がいないのは勿体ない。お前の火の意思……私の風で燃え盛らせ、次代へと繋げよう」

 ちょうどいいタイミングにざあっと風が吹き抜ける。金の髪を揺らしながら、テマリは勝ち気に笑った。

「シカマル、私のところへ嫁に来い」

 いや……それ、オレの台詞の予定だったんすけど。

 面倒なこと、やめとくか……なんて言いながら「でも、アンタとなら面倒なことでもやっていきてえ」と繋げるはずだったのに何だこの展開は。
 しかもオレより上手いこと言ってるし。誰だこのイケメンは。あ、オレの嫁か。

 いやいや待て。この人は他里の忍だ。そう簡単に結婚できるはずがない。

「いや……里の問題は――」

「それなら問題ないぞシカマル!」

 どこからともなく綱手様と我愛羅が現れた。

「木ノ葉と砂の友好条約の象徴として、お前には砂に嫁いでもらう! 風影殿も了承済みだ」
「お前はヘタレだが、頭は切れる。砂隠れの戦力を補うのに持ってこいだろう」
「待てよ、でもオレは家を――」

「大丈夫だ!!」

 すると今度はお袋が現れた。

「アンタが砂に行っても親戚から跡継ぎを決めてやる! または、私が新しく生んでやるよ!」
「え、でも親父は――」
「ふん、アンタにはずっと言ってなかったけど」

 お袋は親指でビシィッ! と自分を指す。

「奈良本家の血を引いてるのは、この私なのさ!!」
「何だと!?」

 今までてっきり親父かと思ってた。くっ、さすが知性派で知られる奈良家……嫡男のオレすら欺くとは……!

「だッだけどよ、秘伝忍術は――」
「お前が漏らさなければ問題ない。それにアレ、他里に漏れてもそこまで脅威にならないし」
「…………」

 分かってはいたけど、そこまではっきり言われると悲しい。

「決まりだな」

 そう言うと、テマリは立ち上がった。いつの間にか白いタキシードを見に纏い、髪を一つにまとめている。

「さあ、行こう」

 テマリがオレの手を引く。
 ふと自分の姿を見下ろしてぎょっとする。

「な………ッ!!?」

 オレの体はいつの間にか、純白のウェディングドレスに包まれている。
 白に淡い花弁が降り注ぐ。

「シカマル! テマリさん! おめでとー!!」

 空から花が降り注いでいる。
 見ればオレたちは、真っ赤なヴァージンロードを歩いていた。
 左右には木ノ葉、砂の忍達が並んでいる。皆笑顔、笑顔、笑顔……。

「シカマルー! お幸せに!」
「たまには会いに来てよ!」
「砂でもお元気で!」
「新婚頑張ってね!」
「まさかお前が一番に結婚するなんてな!」
「クッ……テマリ、立派になったじゃん……!!」
「泣くなカンクロウ」
「シカマル君、おめでとう!」
「似合ってるぞ」
「やっぱり君チ○コついてなかったんだね。おめでとう!」

 サクラに続いていの、チョウジ、リー、テンテン、キバ、サイ、カンクロウ、シノ、ヒナタ、ネジ、サイ……そして、ヴァージンロードの末には。

「よっ!」

 四代目を彷彿とさせる羽織のナルトが、本来なら神父の位置だろう場所に立っている。

「シカマル、オレってばなんか挙式のしきりもできるくらい急に頭良くなっちゃって、火影も一人でやっていけそうだ! だから安心して、いい嫁さんになってくれ!」

 にっと白い歯を見せて笑うナルトは、次にオレの隣を見る。

「シカマルのこと、よろしくな」
「ああ」

 頼もしい笑みを浮かべるテマリ。オレの視線に気付くと、曇りのない翠玉を俺に据える。

「そう不安そうにするな。面倒なことは全て私がやる」
「いやあの……そうじゃなくて」
「ついてこい。必ず幸せにするよ」

 破顔するテマリ。

 ――イケメンだ。

 オレは色々打ちのめされた。

「では新郎」

 ナルトが、あのナルトが、理知的かつ真摯な面持ちでテマリを見る。

「汝、テマリはこの者奈良シカマルを妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓うか?」
「誓おう」

 普段の五割増しキリリとして、テマリが答える。
 マジで賢そうなナルトは、次いでオレの方を向く。

「汝、奈良シカマルはこの者テマリを夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓うか?」
「……待て」

 オレは一つ、深く息を吸い込んだ。

 愛は誓ってもいい。オレが木ノ葉にいらねえっつーんなら、それも仕方ねえ。
 だが、これだけは言わせてくれ。


「オレはッ!!! 女じゃねえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ――……






「ハッ」

 シカマルは身を跳ね起こした。

 荒涼としたこの大地は、木ノ葉でも砂でもない。
 ヴァージンロードも、ウェディングドレスも、ない。

「夢、か……」




☆シカマルくん、テマリさん、ご結婚おめでとうございました――!




20140705 執筆、支部投稿

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