完全なる静寂の中にいる。
心音の奏でる規則正しい旋律だけが、自分を動かしている。自分に告げている。
──全てを壊せ。
──お前の目の前に現れる、異形を、全て壊せ。
自分は手にした獲物を握り締める。
「【アレン】! しっかりして!」
静寂が破れた。
『誰か』が叫んだのだ。
己を包んでいた静寂が、ナイフで刺されたように剥がれる。五感が蘇り、世界の情報がこの身体に届いていたことに──これまでそれを認識できていなかったことにも──気付く。騒々しかった。悲鳴、怒号、土煙、血の匂い。
「俺、は……」
俺は意識を取り戻す。
そうだ。俺は一体、何を……