星に願いを

 誰からともなく空を見上げ感嘆の溜め息を漏らす。赤紫の天井から天使の羽根が舞い落ちる、お伽話のような情景が広がっていた。風が甘く清涼なミントの香りを運び、戦いの熱気を静かに覆い沈めていく。

 カプシン神は次第に小さくなり、初めこそ何やら喚いていたものの今ではすっかり黙り込んでしまった。死んだのだろうか。それとも自分のいるべき場所へ帰ったのだろうか。

「あれ、何だ?」

 景色に見惚れていたティアが宙の一点を指す。不規則に瞬く光が、雪に紛れてゆるやかに落ちてきていた。

 皆知ってるように、子供というのはヒカリモノと新しいものと珍しいものが大好きだ。そんなわけで、その光を真っ先に受け止めに走りジャンプして取ったのは俺の馴染みのガキだった。

「星の欠片じゃん!」

 レックはそれを掲げて見せる。小さな黄水晶に似た結晶体が煌めいている。

「何でいきなり降って来たんだ?」

「ロトさんが何かしたんじゃないかな」

 俺の問いにノアが答えた時、力強い羽ばたきが近づいて来た。竜とロトだ。ロトがその背から飛び降りると、竜はバンダナの少年に姿を変えた。

「ロト、これで帰れるんだろうな?」

 アレフが少女に詰め寄る。

「ちょっと待って」

 彼女は地面に向け、指先でくるくると円を描く。すると見覚えのある青い燐光が発生し、緩く渦を巻こうとした。しかしそれは完全な渦になりきる前に、一瞬で掻き消えてしまった。

「うーん、おかしいな。できそうなんだけど」

「どういうことだよ」

「まだ少しカプサイ神の歪みの影響が残ってるのかも。時空が混乱しちゃってる」

「俺のルーラストーンもダメかな」

 ノアが小さな石を掲げるが、反応は芳しくないようだ。

「神様精霊様天使さまーっ! もとの世界に帰してくれー!」

 レックが星の欠片を天に捧げるように持ちながら、ぴょんぴょんと跳ねている。

「落ちつけドアホ」

 何でお前はまだそんなに元気なんだ。俺は奴を抑えにいこうとして目を見張った。星の欠片から強い煌めきが生まれ溢れ出し、ロトの作り出そうとする渦巻きに注ぎ込む。するとなんと、渦は星雲のように輝き完璧な流れを保って留まった。

「さすが星の欠片だね! おかげで旅の扉できちゃった!」

 ロトが喜ぶ。俺にはどの辺がそのおかげなのか分からない。だが、察した可能性を尋ねてみる。

「ってことは、俺達帰れるのか……?」

「うん、そうだよ」

 皆歓声を上げた。

 

 

 

主人公共闘企画リレー小説、七巡目二十番目です。稲野さんから「星の欠片」頂きました。

もっとロマンティックな活かし方があったんじゃないかと思うのですが、それは置いといてエンディングです。

次は夏ミカンさんへ。回すアイテムは「ルーラストーン」です。