「みんな飛び乗れー!」
でかいスライム戦車がこっちに向かって突っ込んでくる。俺達はそれぞれタイミングを合わせて戦車に飛び乗った。
ダークホビットはあらかた蹴散らした今、何でこれに乗らなくちゃいけないんだろう。理解できないが、猛進されてきちゃ乗るしかない。またアイツの勢いに飲み込まれる形になった。
「なあアンタまじすげーな! 博士!? 博士なの!?」
「ねー可愛いでしょスラリンガルって!」
中にはいつの間にかすでにこれを出したねーちゃんが乗っていて、レックと噛み合ってるのか微妙な会話をしている。だが二人とも満面の笑みで問題には感じていないらしい。
「こうなったらアレ欲しい! こう、着るとピカーッてなるヤツ! バトルロードのおっさんが着てるみたいなヤツ!」
レックは身振り手振りを交えて言うが、何のことを言っているのかさっぱりわからない。だがねーちゃんはうんうんと大きく頷いた。
「おっけー、任せて!」
そしてまた鍋を床に据え、カバンから何やら取り出して放り込み蓋を落とした。鍋がぶるぶると震え始める。
「お前なあ、いきなり突っ込んできたら危ないだろう!」
マフラーの奴が双剣を鞘に収めてレックに詰め寄る。だがレックは鼻歌交じりに操縦レバーを動かして残党を蹴散らしながら明るく言う。
「でもみんな乗れたじゃん」
「そうじゃなくて」
マフラーは額を抑える。分かるぞ、その気持ち。俺も少し前ならツッコんでた。だが今なら分かる。コイツに普通の理論は通用しない。
レックはそれでも文句を言いたげな雰囲気を察したのか、振り返って唇を尖らせる。
「えーとアンタ……何だっけ名前。覚えづれえんだよな、似た奴らいっぱいいるから。あだなつけようぜ!」
「いや何でそうなったし」
「むしろ覚えづれえよ」
しかし奴の持って行った方向は完全に俺の予想外で、思わず放ったツッコミは鎧の兄さんと被った。
――チーーーーン!
ちょうどその時、軽快な音と共に鍋の蓋が吹き飛んだ。鍋から目が利かなくなるほどの眩い光が溢れ出し、俺は目を腕で覆う。再び目を開けて見るとそこには信じがたい光景が広がっていた。
俺も含めた五人の男達の服装が、シンプルなスーツに変貌していたのだ。
「ヒーローイエロー!」
急に現れた真っ黄色の衣装に目を丸くして見ているマフラーの男を指して、レックが言う。
「ヒーローグリーン!」
不思議そうながら無口な少年は、自分の髪と同じ色の衣装にも何も言わない。
「ヒーローブラック!」
鎧だった全身黒づくめの兄さんは凄く帰りたそうな顔をしている。
「ヒーローブルー!」
俺のことらしい。ぴったりした服は目の覚めるような青だ。
「そして俺、ヒーローレッド! と、俺達をサポートしてくれる万能博士!」
赤いスーツのレックが姉ちゃんを示し、これまた何故か白衣を着た姉ちゃんが手を振る。
「みんな合わせて! 異次元戦隊DQヒーローズ!」
ババーーーンっ!!
バカが高らかに叫んで何故か爆弾石を宙に向かって投げたところで、俺達はまったく操縦していなかった戦車が崖から空中滑走していることに気付いた。
主人公共闘企画リレー小説、四巡目十一番目です。稲野さんから「勇車スラリンガル」頂きました。
そしてOKサイン頂いたのでやりました。良かったんでしょうかこれで。
次は夏ミカンさんへ。回すアイテムは「爆弾石」です。
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