燃えろ食欲の炎!

 頭の上を黒い点が過ろうとしている。よし、今だ!

「ライディンッ!」

 掌にかき集めた力が爆発する。碧空に走った稲妻は過たず点を射抜いた。

 ひゅるるると気の抜けた音を立てて姿焼きになった鳥が落ちて来た。ヘルコンドルだ。勿論既に絶命していて、白く煙を上げていた。

「やった、今度は成功だ!」

 俺はヘルコンドルに飛びつく。ウキウキと首を落として羽毛を剥ぎにかかる。だがその前に視界の端に何かが光った。手を止めて見てみる。今落としたばかりの首、嘴に黄金の輝きがあった。

「何でモンスターコインなんて持ってんだろ」

「知らねえ。スライムでも食ってたんじゃねえ?」

 アレンがそれを拾い上げる。しかも絵柄はスライムだ。コイツ、ヘルコンドルなのに。変なの。

 まあいい。そんなことより飯だ! ナイフを動かす作業を再開する。火が通っちまうと剥ぎづらくて見た目がボロボロになっちまうんだが食えりゃいいよな。

「アレン、一応松明用意してくれねえ?」

「大体火通ってるだろ」

「でも生で腹壊したら嫌じゃん」

「仕方ねえな」

「あっ!」

 アレンの声に、アレンじゃない声が被った。思わずそっちを窺う。ゴツゴツした岩場の向うから、明らかに岩じゃないものがこちらを見ていた。なんかおっかねえ顔した鎧の兄ちゃんと目を丸くしたショートヘアの女の子だ。

「わあ、あれ私達のモンスターメダルだよね! 良かった、これでご飯かデイン君か決められるね」

「いや、勝敗は関係なくなったぞ」

 兄ちゃんの目が暗く燃え上がり、口の端が吊り上がった。こちらへ向かって踏み出しながらすらりと腰の業物を抜き放ち、剣先を俺に向ける。

「一応聞く。さっき、キメラをデインで撃ち落としたのはお前か?」

「え? ああ……そういや落としたかも」

 答えた瞬間だった。岩が崩れる音、一筋の鈍い光。肌が泡立って後ろに飛びのいた。俺がいた空間に兄ちゃんが剣を突き刺していた。

「てめーかさっきのデイン泥棒は!」

 兄ちゃんが声を荒げて俺に斬りかかる。おいおいおい! 五月雨の如く繰り出される剣を飛んで跳ねてかろうじて避ける。

「ロト、手伝え!」

「アレフさん」

 ロトって呼ばれた女の子が真摯な顔つきで兄ちゃんを呼ぶ。

「いくらなんでも人は美味しくないと思うよ」

「そうじゃねえよさっきの借りを返すんだよ! 食い物頂くからいいから何かかけろ!」

「バイキルトでいい?」

 ロトが詠唱すると俺の周囲で上がる剣の唸り声が大きくなった。くっそ、あの子魔法使いタイプか! っていうか俺何でこんなことになってるんだ?

 こりゃヘルコンドルどころじゃねえ、そして素手でやり合える相手でもねえ。俺はヘルコンドルを後ろに投げ捨ててラミアスを引き抜く。

「アレン助けて!」

「やだよ、自業自得だろ」

 俺が人に襲われてるっていうのに、仲間は冷たい返事をしてきた。くそっ薄情者!

「じゃあ手伝わなくていいから飯取っといて!」

 アレンは不承不承といった様子で松明を放り投げ、焼き鳥を回収しにいこうとする。

「いてっ!」

 どこからともなく第三者の声がした。

 

 


主人公共闘企画リレー小説、二巡目五番目です。稲野さんから「モンスターメダル」頂きました。

一回やってみたかったんです、主人公vs主人公!

次は夏ミカンさんへ。回すアイテムは「松明」です。