痺れアゲハは食べられるかもしれません

「当たった! すっげー俺のコントロールすっげー!」

 雷の柱が黒い点になりかけていたキメラを貫いたのを見て俺は飛び上がった。やっぱり俺のデインコントロールは日増しに良くなっている。毎日欠かさず使ってる甲斐があったってもんだ。努力ってのは大事だな! うん!

 満足感に浸っていると、雷が落ちた場所から白くて細い光が立った。目の上に手を当てて目を凝らす。何だ今の。転移呪文っぽいような?

「おおっ!?」

 次の瞬間、今見たのとそっくりな光が何故か俺の足下に落ちて来た。綺麗に地面に鎮座したのはキメラの翼。と、煙を上げる黒っぽい何か。

 俺はその塊をとくとくと眺めて、どうも俺が射落としたキメラは炭になってしまい、何故か羽根だけが無事だったらしいと理解した。がっくりと肩を落とす。

「ああー……やっと食い物にありつけると思ったんだけどなあ」

 実はこのよく分からない場所に来てから既に丸一日が過ぎているのだが、その間俺は何も食べられていない。携帯食料があればそれで凌げたんだがあいにく何も持っていなかった。そろそろ腹も身体も限界で、いい加減何か食べたかった。

 ああ、俺に世界を駆ける翼があったなら。そうしたらすぐに帰って何か食べられるのに。

「ん? あっ!」

 その時、閃きが走った。足下にある物を改めて見てみる。キメラの翼。翼じゃないか! これを使えばどこかに飛べるかもしれない!

 早速キメラの翼を拾い上げてみる。改めて見てみるとキメラの翼っていいな! 今までルーラできるし要ると思ったことなかったけど、こういう覚えのない状況じゃあ助かる。このキメラの翼が記憶した場所に連れてってもらえるかもしれないからな。うーんキメラの翼、良いアイテムだ! 何となく食えそうな気もしてきたし!

 俺はキメラの翼を見つめて食ってみようか使おうか迷う。そのうちに近くの茂みがガサガサと鳴った。

「おい、レックお前ふざけんじゃねーぞ!」

 頭にまずそうな木葉を付けた青い旅装の男が飛び出して来た。俺は戦利品を見せてやる。

「アレン見ろよ! 俺の超絶デインテクニックでキメラ落とした!」

「それどこじゃねーよバカ!」

 後ろ見ろ、とアレン。俺は言う通りに目をやる。そしておっと声を漏らした。

 木々の隙間からピンクの風――いや、痺れアゲハの大群が押し寄せてくる!

「お前のデインでびっくりして俺を襲って来やがった!」

 アレンが剣を抜いて大きく空を薙ぐ。衝撃波が痺れアゲハを襲い鱗粉がぶわっと舞う。俺は袋を取り出して走り出した。鱗粉に袋を翳すと中に粉が溜まっていく。

「お前何やってんだよ!」

「毒蛾の粉って適量なら食えるらしいぞ」

「んなことやってる場合か戦えよ!」

 俺はもっと毒蛾の粉を集めたかったが、仕方ないので袋を閉じて指先を伸ばし真空派を飛ばす。

「べぶっ」

 しかし急に目の前が真っ暗になった。顔面にへばりついたものを投げ飛ばす。ただの痺れアゲハだった。けれど投げた方を見て顔から血の気が引いた。いけねえ、キメラの翼と毒蛾の粉も一緒に投げちまった!

「あーっ! キメラの翼とふりかけ!」

「黙れ!」

 アレンの毒づきと共に、一筋の光が立ちのぼった。

 

 


主人公共闘企画リレー小説、二番目です。稲野さんから「キメラの翼」頂きました。

レックとアレンでギリギリ共闘です。まだちょっと様子見な感じで次は……頑張りたいです。1000字は意外と短い! 他の方の主人公も出せなかった。


とりあえずブログに投げて後で様子見てページ改めます。


次は夏ミカンさんへ。回すアイテムは「毒蛾の粉」です!