小説を投稿する際、地味に頭を使うものが三つある。
 題名、ジャンル分け、タグ付けだ。
 人によって困り度は異なるだろうが、私の場合は題名<ジャンル分け=タグ付けである。題名はあれこれ考えるとキリがないので中身にそって適当につけてしまえるが、ジャンル分けとタグ付けはそうはいかない。
 私は小説を書く時、自分の書きたいものが何のジャンルかをよく考えない。適当に書いている。だから自業自得なのだが、作品について説明する時はたいていジャンルの説明がうまくいかなかった。
 このジャンル分けで一番考え込んだのは、DQ小説同盟にⅢの長編小説を登録する時だった。
 私はDQⅢで一つ長い話を書いた。当然力を込めて書いていたので、なるべく適切なタグ付けをして、見てくれる人にも納得してもらいたい。しかし熱を込めて書いていればいるほど自分の書いたものがどんなものか分からなくなる。そんな経験はないだろうか。
 ここではじめての方にも分かるように、DQ小説同盟の作品傾向タグをご覧に入れよう。









 この中から筆者的に自作に合っている作品傾向を複数選ぶのだ。
 さて私の話はどうだろう。
 「冒険譚」なのは間違いない。話の中にたくさんの危険が出てくるのだから。
 「恋愛」。これもそうだろう。私は「Ⅲの勇者♂と武闘家♀の恋愛話が書きたい」と思って書いている。恋について考えるシーンもある。多分大丈夫だ。
 「友情」。うーん。
 このあたりから私の思考は揺れ始める。
 友情とはどの程度のものから友情アリとして名乗って良いのだろう。この話には主役カップリングの他にパーティーメンバーの絆も描かれてるから「友情」にはチェックを入れていいか。
 「心理」。うん書いてる書いてる。
 「ギャグ」? 笑い要素はあると思うけど、そこまで笑ってもらえる自信はないから外す。
 「コメディ」。名乗って良いのか? まあ入れておくか。
 「ほのぼの」……そういうシーンもなくもないが、ほのぼのを求める人は勇者が吐血するシーンを見たがらないと思う。私は他人を苦しめたいわけではない。
 「切ない」と「悲しい」はまあよし。そこそこある。
 自分への自信のなさのせいで思考がブレブレである。しかし本当の迷いはここからだった。
 「ダーク」。
 この三字を前に、私は完全に頭を抱えた。
 ダーク。
 暗いこと。
 闇に隠れているさま。
 作品傾向としては、暗い内容を指すのだろう。それは分かる。だが問題は、「暗い」の基準と私のこれまで接してきた作品にあった。
 有り体に言うと、普段からダークな話を好んでいるために「自分の話にダーク要素があると認めたい私」と「自分の話に盛り込まれた要素をダークと呼ぶには甘いと断じる私」が発生してしまったのだ。
 小説同盟の作品登録画面を開いたまま固まる私の脳内で、奴らは話し始める。
「ハァイ、ジョ一ジ。ダーク成分の入った小説を書いたんだって?」
「そうなんだワィズ。ちょっと見ておくれよ」
「ふーむ。これはまだまだライトじゃないかい?」
「なんだって?」
「だってダークファンタジーにつきものの徹底的な絶望やエグいくらいのグロ描写がないじゃないか。人間関係も泥沼になっていない。せいぜい手入れされていなくて濁ってきた公園の池くらいじゃないか」
「それは聞き捨てならないな。ダークに急転直下の絶望とエグいグロと人間関係の泥沼が必要だと誰が決めた?」
「でも実際そうだろう。ダークの代名詞であるホラーや最近話題の鬱アニメでは、主人公達に情け容赦ない展開が待ち受けている方がウケてるじゃないか。そうでないとぬるい」
「ハンバーガーはでかければでかいほどいいわけじゃないだろう。幸福の影につきまとうささやかながら離れない暗さがふとした瞬間にたまらない絶望をもたらすこともあるんだ」
「ハハハ。面白いことを言うなジョージ。ちょっとこっち来いよ」
「お前こそその排水溝から出てこい」
 そうして頭の中で殴り合いを始めるわけだからたまったものではない。
  Ⅲ長編小説執筆時の私には、この二人の外国人のように少々変に突き詰めるところがあった。当時の私はその中に妙に強い意見が入ってしまっていたり、disり愛と呼ばれるものが入っていたりしたことに気づかなかった。
 作品への熱狂から客観性や理性を失ってしまうのはファンとしてよろしくない。この出来事から私はDQファンを公言することに躊躇いを感じるようになった。ちなみに三年程度経った今、私とジョ一ジとワィズは「マナーのいい狂人ヲタクを目指す会」を組み、「自己問答の最中でも他人が攻撃されていると感じるようなことは極力言わないこと」「ヲタクならば互いの推しをリスペクトすること」という約束を素で守れるようになるべく、毎日お茶会をして訓練している。
 そのような形で拙作のジャンル分けとタグ付けに情熱を注いだ日々。楽しかった。さらに、非常に鍛えられたと思う。最近では書き始めた話のジャンルをいち早く察することができるようになった。 
 これも小説同盟のお陰である。
 DQ小説同盟ってスゲェ。思い返してみて私は、改めてそう思う。









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